特定技能「素形材産業」とは?業務範囲や試験内容まで詳しく紹介
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「素形材産業」は、在留資格「特定技能」で外国人を受け入れできます。特定技能制度を活用し、外国人の受け入れを行うニーズは年々高まっている状況です。
しかし、「特定技能に対する知識が不足している」「受け入れを進める方法がわからない」といった企業も多いのではないでしょうか。
この記事では、特定技能「素形材産業」で行える業種や、外国人を受け入れする要件、技能試験について詳しく紹介いたします。
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目次
「特定技能」とは
「特定技能」とは、人材確保が難しい業種において日本国内の企業が一定の専門性・技能を持っている外国人を働き手として受け入れることができる在留資格です。
特定技能の在留資格は、「特定技能評価試験と日本語試験に合格する」もしくは「飲食料品製造業の技能実習2号を修了する」のいずれかの条件を満たしていなければなりません。
制度の特性上、即戦力となる知識やスキルを持っている外国人を雇用することができるので、人手不足の解消や優秀な人材確保が期待できます。また、特定技能制度を利用できるのは、特に人手不足が深刻な12分野に限定されております。
特定技能「素形材産業」とは
「素形材産業」とは製造業の一種で、金属やプラスチックなどに熱や圧力を加えて製品を作る産業です。金属を溶かして型に流し込む鋳物などが代表的です。
日本では少子高齢化が進み、働き手不足が問題視されていますが、「素形材産業」の人手不足も深刻な状況です。
平成29年の全職種の有効求人倍率は1.50倍ですが、製造業全体では2.80倍、鋳物製造工は3.82倍と、他の業種・職種と比べて人手不足となっています。そういった背景から「素形材産業」は特定技能の対象分野となりました。
「素形材産業」で製造しているもの
「素形材産業」で製造される製品について紹介します。例えば、自動車にはエンジン部分に鋳物、ボディ部分に金属プレス品が使われています。これらは「素形材産業」によって製造されています。「素形材産業」は日本の自動車業界を支える、重要な製造業です。
他にも、ボルト・ナット・リベット・小ねじ・木ねじ等の製造業も「素形材産業」の一つです。日本の工業のものづくりを土台から支える産業でもあります。
特定技能「素形材産業」は「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」に統合された
特定技能制度が始まった当初、製造分野は「素形材」「産業機械」「電気電子情報関連製造」の3つに分かれていましたが、企業の受け入れ手続きを簡素にし、特定技能の外国人がより仕事をしやすくなるように、2022年に製造業3分野が1つに統合されました。
特定技能「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」に統合されたことにより、特定技能の手続きが簡略化され、より運用しやすい制度に生まれ変わっております。
特定技能「素形材産業」の現状
出入国在留管理庁の令和4年3月末時点の統計によると、特定技能「素形材産業」の外国人数は3,948人です。前年対比で比較すると、前年対比で+2,259人(約235%)と、その人数は大きく増加しております。
国籍別では、ベトナム人が2,513人で特定技能「素形材産業」全体の約64%を占めている状況です。次いでインドネシア492人(約13%)、フィリピン335人(約9%)といった内訳となっています。
令和3年3月末 | 令和4年3月末 | 前年対比 | |
---|---|---|---|
外国人合計 | 1,669人 | 3,928人 | 235.35% |
ベトナム | 1,001人 | 2,513人 | 251.04% |
インドネシア | 197人 | 492人 | 249.75% |
フィリピン | 98人 | 335人 | 341.83% |
特定技能「素形材産業」で就業可能な業種
特定技能「素形材産業」を含む「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」分野で就業可能な業種は、以下19種類です。この分類の製品を製造している事業所・製造ラインでのみ、特定技能外国人の受け入れをすることができます。
- 業種一覧
- 鋳型製造業(中子を含む)
- 鉄素形材製造業
- 非鉄金属素形材製造業
- 機械刃物製造業
- 作業工具製造業
- 配管工事用附属品製造業(バルブ・コックを除く)
- 金属素形材製品製造業
- 溶融めっき業(表面処理鋼材製造業を除く)
- 電気めっき業(表面処理鋼材製造業を除く)
- 金属熱処理業
- その他の金属表面処理業(アルミニウム陽極酸化処理業に限る)
- ボルト・ナット・リベット・小ねじ・木ねじ等製造業
- はん用機械器具製造業(消火器具・消火装置製造業を除く)
- 生産用機械器具製造業
- 業務用機械器具製造業(医療用機械器具・医療用品製造業及び武器製造業を除く)
- 電子部品・デバイス・電子回路製造業
- 電気機械器具製造業(内燃機関電装品製造業を除く)
- 情報通信機械器具製造業
- 工業用模型製造業
就業に関する注意点
類似した分類の製造業でも、特定技能で就業可能な産業分類に該当しないケースもありますので、注意が必要です。
例えば、2つ以上のパーツを固定するのに使用する部品を製造する「12.ボルト・ナット・リベット・小ねじ・木ねじ等製造業」は特定技能で就業可能ですが「はとめ製造業」や「かしめ製造業」の事業所・製造ラインには就業できません。産業分類についての詳しい情報は、経済産業省のホームページをご確認ください。
参考:対象となる産業分類一覧
特定技能外国人が従事できる業務区分について
特定技能で「素形材」「産業機械」「電気電子情報関連」が統合される以前、業務区分は19区分に分けられていました。例えば、「鋳造」業務区分の在留資格を持っている特定技能外国人は、「鋳造」以外の業務を行うことができませんでした。
しかし、2022年に「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」へ統合された際、業務の分類も「機械金属加工」「電気電子機器組み立て」「金属表面処理」の3区分に統合されております。
この統合により、旧区分が属している新区分の業務全般を行うことが可能となりました。
例えば「鋳造」の在留資格を持つ特定技能の外国人は「機械金属加工」区分内(以下①)の「ダイカスト」や「金属プレス加工」などの業務にも従事することができます。
現在の3区分と旧19区分について
業務区分について、現在統合されている3区分と、過去分けられていた19区分は下記のように分類されています。
①機械金属加工
- 機械金属加工一覧
- 鋳造
- ダイカスト
- 金属プレス加工
- 工場板金
- 鍛造
- 鉄工
- 機械加工
- 仕上げ
- プラスチック成形
- 溶接
- 塗装
- 電気機器組立て
- 機械検査
- 機械保全
- 工業包装
②電気電子機器組立て
- 電気電子機器組立て一覧
- 機械加工
- 仕上げ
- プラスチック成形
- 電気機器組立て
- 電子機器組立て
- プリント配線板製造
- 機械検査
- 機械保全
- 工業包装
③金属表面処理
- めっき
- アルミニウム陽極酸化処理
雇用形態と関連業務について
特定技能「素形材産業」を含む「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」分野では、特定技能の外国人の直接雇用に限られており、派遣での受け入れはできません。
また、この特定技能は製品の製造や加工に従事するための制度ですが、関連業務にも付随的に従事することができます。関連業務の例として、「原材料・部品の調達・搬送作業」「前後工程作業」「クレーン・フォークリフト等運転作業」「清掃・保守管理作業」が挙げられます。
ただし、これらの関連業務は、特定技能で就業が認められている19種類の業種の事業所・製造ラインに限定されています。
特定技能「素形材産業」で外国人を受け入れする要件
特定技能「素形材産業」で外国人を受け入れるためには、さまざまな要件が定められています。企業と外国人それぞれの必要な要件について紹介いたします。
受け入れする企業の要件
特定技能の外国人の受け入れを考えている企業は、以下3点の要件を満たさなければなりません。
企業の業種
受け入れ企業の業種が、「特定技能『電気・電子情報関連産業』で就業可能な業種」にて紹介した旧19区分いずれかに該当している必要があります。
複数の製品を製造している事業所は、該当業種の製品を製造している製造ラインでのみ、特定技能外国人の受け入れをすることができます。
「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」への加入
「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」とは、厚生労働省が運営している団体です。
特定技能の外国人の受け入れを考えている企業は「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」への加入が必要です。加入申請は、経済産業省のホームページからオンラインで申請します。複数の事業所を持っている企業は、事業所ごとに申請をします。
加入についての費用は、現時点(令和6年2月時点)では無料となっています。「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」の最新情報は、こちらをご確認ください。
参考:製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会 (METI/経済産業省)
特定技能外国人の支援体制
特定技能外国人を受け入れる企業は、外国人に対して、出入国のための送迎、住居の確保など、様々な支援体制の義務が発生します。
支援体制を整えるには、「自社で支援計画を立てて実施する」または「登録支援機関に委託する」の2通りの方法があります。
詳細な受け入れ方法については下記の記事をご覧ください。
外国人の要件
特定技能「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」における在留資格を得るためには、2つのルートがあります。
「製造分野特定技能1号の評価試験と日本語能力試験に合格する」もしくは、「技能実習2号を修了する」のいずれかが必要です。
技能実習2号を修了した場合は、特定技能でも同じ業務区分の業務に従事することができます。しかし、他の区分の業務に従事したい場合は、対象の「製造分野特定技能1号評価試験」を受け、合格しなければいけません。
例えば「鋳造」の「技能実習2号」を完了した外国人は、特定技能の在留資格を取得することで、「機械金属加工」区分の業務全般に従事できます。
しかし、「電気電子機器組立て」や「金属表面処理」区分の業務に従事したい場合は、該当する「製造分野特定技能1号評価試験」を受験し、合格する必要があります。この場合においても、「日本語能力試験」は免除されます。
特定技能「素形材産業」の技能試験について
特定技能「素形材産業」を含む「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」の在留申請をしたい外国人が受ける技能試験は「製造分野特定技能1号評価試験」です。
試験日程・開催場所
「製造分野特定技能1号評価試験」は、日本と海外で開催されています。日本国内では仙台〜福岡の10箇所で、年3回行われており、海外では、インドネシア、タイ、フィリピンで、年1回行われます。
試験日の約1ヶ月前から申し込み受付が始まり、先着順で受験が可能です。試験の申し込みは、受験者本人が特定技能外国人人材制度のポータルサイトから行います。その際、試験区分と19の技能から科目を選びますが、区分を誤ると目的の業務に就業できないため注意が必要です。
「学科試験」と「実技試験」を合わせて受験し、それぞれで合格点をとると「試験合格」となります。
受験料は約8,000円、合格後に特定技能の在留申請時に使用する「合格証明書」の発行手数料は約15,000円です。
試験に関する最新情報は、経済産業省Webサイトから確認できます。
学科試験
学科試験は、ペーパーまたはCBT方式(コンピュータを使った試験方式)で行われます。30問の選択式で、合格点は総得点の65%以上です。
試験範囲は、選択した「機械金属加工」「電気電子機器組み立て」「金属表面処理」いずれかの区分に関する共通問題と、鉄工、プラスチック成形などの選択した技能の問題です。
例として、試験情報ポータルサイトに掲載されている「機械金属加工」区分と「鉄工」技能の試験範囲と、サンプル問題を紹介します。
「機械金属加工」区分共通の問題(試験範囲:「安全衛生、品質管理等、一般常識レベルの問題」)
◆サンプル問題:(問題1・安全衛生)
品物を運ぶときは、作業を早く行うために重くても無理をして運ぶ。
正答:×
「鉄工」技能の問題(試験範囲:鉄工作業法一般、材料、機械工作法、製図、安全衛生、鉄工作業法)
◆サンプル問題:(問題6・材料)
炭素鋼の性質では、引張強さが高くなると、硬さは低くなり曲げやすくなる。
正答:×
実技試験
実技試験は、ペーパーまたはCBT方式(コンピュータを使った試験方式)で行われます。10問の選択式で、合格点は総得点の60%以上です。試験範囲は、鉄工、プラスチック成形などの選択した技能の問題です。
例として、試験情報ポータルサイトに掲載されている「鉄工」技能の実技試験範囲と、サンプル問題を紹介します。
「鉄工」技能の実技試験問題(試験範囲:鉄工作業法について)
◆サンプル問題:(問題12)
「けがき」を行う際、もっとも正確な位置に「けがき」を行うことができる道具を選択肢A〜Dの中から一つ選びなさい。
A:墨刺し B:石筆(チョーク) C:スチールマーカー D:けがき針
正答:D:けがき針
まとめ
特定技能「素形材産業」は、製造分野で即戦力となる外国人材を確保し、人手不足の解消が期待できる制度です。しかし、特定技能制度は複雑で、分野毎に様々な手続きが求められます。
自社での対応が難しい場合には、国内の人材紹介会社への相談がおすすめです。受け入れまでのプロセスを効率化し、受け入れ業務の負担を軽減できるからです。
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