特定技能の生活オリエンテーションとは?内容や注意事項などを解説
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特定技能外国人の受け入れを検討しているが、「生活オリエンテーションって何をすれば良いの?」という疑問を持つ企業も多いのではないでしょうか。
この記事では、特定技能外国人に対して企業が行う「生活オリエンテーション」について、具体的な実施内容と注意点を詳しく紹介いたします。
特定技能の生活オリエンテーションとは?
特定技能外国人を受け入れる企業には、支援計画に沿った支援を提供する義務が生じます。その中の一つの生活オリエンテーションは、特定技能外国人を受け入れる企業が行う支援活動の一つです。
多くの特定技能外国人は、日本の生活に馴染みがありません。知らないことばかりの日本では、気付かずにルールを破ってしまう可能性があります。
特定技能外国人が日本での生活に必要な基本情報を学び、安心して日本の生活を過ごせるように、生活オリエンテーションを通じて学習していきます。
生活オリエンテーションと事前ガイダンスの違い
生活オリエンテーションと事前ガイダンスは、どちらも外国人が日本で安心して生活を始めるための重要な支援活動です。しかし、それぞれの支援は内容や目的に違いがあります。
事前ガイダンスは、外国人が日本に入国する前に、基本的な情報を提供するもので、主に契約内容や労働条件について説明します。
一方、生活オリエンテーションは、外国人が日本に到着後、具体的な生活情報や手続き方法を学ぶ場です。生活オリエンテーションは、より実際の生活に沿ったサポートを行います。
生活オリエンテーションの実施方法
生活オリエンテーションは、対面講義、WEBオンライン講座、学習動画の視聴など、様々な形式で実施できます。
対面講義は外国人と直接コミュニケーションを取りやすく、WEBオンライン講座は場所を選ばず遠隔地からでも参加でき、学習動画は講師による説明のばらつきを防ぐといったメリットがあります。
状況に応じてこれらの形式を組み合わせることで、より効果的な講義が可能です。
生活オリエンテーションの実施に求められる時間
生活オリエンテーションは「8時間以上」の時間をかけて実施します。特定技能外国人を転職で受け入れる場合にも、新たに生活オリエンテーションを実施する必要があります。
生活オリエンテーションの具体的な内容
生活オリエンテーションでは、以下の項目や内容を伝えます。
交通ルール
交通ルールは国によって異なります。日本の交通ルールを説明します。
- 日本の交通ルールの説明事項例
- 歩行者や自転車の交通ルール
- 信号の意味
- 横断歩道や標識の意味
- 踏切のルール
- 禁止されているルール(飲酒運転、自転車の二人乗り、無免許運転禁止)
日常生活のルールや習慣
日本で日常生活を送る上で、守らないといけないルールや習慣を説明します。
- 日本の日常生活のルールや習慣の説明事項例
- 基本的な挨拶、礼儀作法
- ゴミ出しのルールや分別方法
- (自宅を含めた)騒音への注意
- トイレの使い方や注意点
- 携帯電話やインターネットの契約方法、公共Wi-Fiの利用方法
- スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ショッピングモール、薬局の利用方法
公共施設のルールや習慣
公共施設や公共場所でのルールや習慣について説明します。
- 日本の公共施設のルールや習慣の説明事項例
- 温泉・銭湯の使い方や禁止事項
- 電車やバス利用時のマナーや禁止事項
- ゴミのポイ捨て禁止
- 喫煙場所や分煙ルール
- 行列に並ぶルール
医療機関
病気や怪我をした際、すぐに医療機関に行けるように以下の内容を説明します。
- 日本の医療機関の説明事項例
- 病気や怪我の度合いによって診療所やクリニックが異なる
- 医療機関の種類(内科や歯科など)
- 外国語に対応している医療機関の探し方
- 保健所の持参と提示
緊急・災害
緊急事態や災害が発生した際の対処方法を説明します。
- 緊急・災害についての説明事項例
- 緊急時にかける電話番号とオペレーターに伝える内容
- 日本で多い災害(地震や津波など)の種類と対策
- ハザードマップの確認方法
- 災害発生状況の確認方法
- 避難方法
- 会社の緊急連絡先と担当者
入管や住所の手続き
入管や住所の手続きについて説明します。入管や住所の手続きを怠ると、処罰や退去強制、在留資格の取り消しの対象となりますので、特に注意が必要です。
- 入管や住所の手続きの説明事項例
- 入管や住所の手続きについての説明事項例
- 在留資格の種類と在留期間
- 在留資格の変更や在留期間延長の手続き方法
- 家族状況変更時の手続き
- 在留カードの取り扱いと所持義務や返却義務
- 在留資格の就労制限と資格外活動許可の申請方法
- 再入国許可のルールと期間別の対応方法
- 所属会社や団体・学校が変わった場合の報告義務と申請方法
- 退去強制となるケースと注意点
- 在留資格が取り消しとなるケースと注意点
- 住所変更時の報告先と届出の提出方法
- マイナンバー(カード)制度の活用方法と申請・更新方法
健康保険制度
健康保険制度や国民健康保険について説明します。
健康保険の費用は給与から差し引かれるため、特定技能外国人がこの制度を理解していない場合、給与からの不当な差し引きと誤解し、トラブルに発展する場合があります。支払い方法や健康保険制度の利用方法について、しっかり説明しましょう。
- 健康保険制度の説明事項例
- 加入対象者
- 手続き方法
- 支払う費用と支払い方法
- 保険証の使い方とメリット
年金制度
日本の年金制度について説明します。健康保険制度と同様に、保険料は給与から差し引かれるため、トラブルを避けるためにもきちんと説明しましょう。
- 年金制度の説明事項例
- 国民年金、厚生年金保険の加入対象者
- 被保険者(第1~3号)の種類と違い
- 保険料支払いの義務
- 基礎年金番号の確認方法と通知書の発行方法
- 年金の種類と金額の換算方法
- 脱退一時金制度(※)
※脱退一時金とは、年金の保険料を支払っていた外国人が、日本での活動を終了して日本を出国する際に、支払った年金の一部を受け取ることができる制度です。支払った保険料の期間と支払わなくてもよかった期間の合計が10年未満であり、かつ年金の保険料を支払った期間が6ヶ月以上あること、日本に住所がなくなった日から2年以内であることなどの条件を満たす外国人が請求できます。
税金
日本の税金について説明します。
- 税金の説明事項例
- 所得税:税額、源泉徴収と年末調整の内容、確定申告が必要な人と対象期間など
- 住民税:税額、住民税申告の対象者、支払い方法、普通徴収と特別徴収の違いなど
- 消費税:税額・税率、消費税が発生するケースなど
雇用・労働
雇用や労働に関する重要事項や法律を説明します。
- 雇用・労働の説明事項例
- 銀行口座:口座開設方法と準備物、海外への送金方法、変更の届出や解約方法、管理方法
- 仕事の探し方:ハローワークの役割と活用方法
- 労働(雇用)契約書に記載が必要な項目
- 雇用形態の種類
- 最低賃金
- 休業補償や休業手当
- 賃金支払いや控除のルール
- 困った時の相談先
- 労働基準法(労働時間、休憩時間、休日や年休、時間外労働(残業)や休日労働、深夜勤務時の割増賃金、時間外労働の上限、産前産後休業時の出産手当金と育児休暇制度など)
相談窓口の案内
日本での暮らしに困った場合の相談先を説明します。
- 相談窓口の案内の説明事項
- 例外国人在留支援センター(FRESC):相談できる内容と相談方法
- 地域の相談窓口:場所や空いている時間、相談できる言語の確認方法
- 会社の相談窓口
初歩的な日本語学習
初歩的な日本語学習を行う方法を説明します。
- 初歩的な日本語学習の説明事項
- 日本語を学習できるウェブサイト「つなひろ」(文化庁が日本語を学びたいと希望する外国人に提供する日本語学習サイト)
- 地域の日本語教室の案内と探し方
- 会社のコミュニティーや日本語学習の機会
生活オリエンテーション実施後は確認書の作成が必要
生活オリエンテーションを実施した後は、対象の外国人から「生活オリエンテーション確認書」への署名(日付とサイン)を受け取り、保管する必要があります。
事前に、実施日時、特定技能所属機関(又は登録支援機関)の氏名又は名称、説明者の氏名を記載した確認書の用紙を用意しておきましょう。
生活オリエンテーションの確認書は、法務省のHPからダウンロードできます。(参考様式第5-8号)
生活オリエンテーションの注意事項
生活オリエンテーションを実施する時には、以下の項目に注意が必要です。
特定技能外国人が理解できる言語で説明する
特定技能外国人はある程度の日本語を理解できますが、完全ではありません。
生活オリエンテーションで説明内容は、日本で安心して生活する上で非常に重要です。特定技能外国人が内容をしっかり理解できるように、通訳の手配や母国語での資料提供などの工夫が必要です。
出入国在留管理庁の外国人生活支援ポータルサイトには、「生活・仕事ガイドブック」が公開されており、2024年6月時点で16言語に対応していますので、幅広い外国人に活用できます。
質問ができる機会を設ける
特定技能外国人が生活オリエンテーションの内容を完全に理解できていない部分があれば、追加の説明が必要です。生活オリエンテーションを一方的に進めるのではなく、随時、質問ができる機会を設けることが大切です。
生活オリエンテーション後の支援も大切
生活オリエンテーションで丁寧に説明を行った場合でも、一度の説明ですべてを把握するのは困難です。対象者が理解できていない内容があれば、適宜繰り返して説明しましょう。
また、在留資格や健康保険などの申請に必要な書類の作成や窓口への提出を、特定技能外国人が一人で行うのは難しいと想定されます。書類作成の補助や提出窓口への同行などを積極的に行い、生活オリエンテーション後も継続してサポートしましょう。
まとめ
特定技能の生活オリエンテーションは、特定技能外国人が日本での生活をスムーズに始めるために重要な支援の1つです。日本の文化や習慣、必要な手続き、緊急時の対応方法などを学ぶことで、安心して生活を送ることができます。
しかし、生活オリエンテーションは幅広いジャンルの説明が必要です。更に外国人がしっかりと理解できる言語での実施が求められます。
これから特定技能外国人を受け入れていこうと考えている企業様は、国内の人材紹介会社に特定技能外国人の受け入れを含めて支援の依頼をおすすめします。特定技能外国人の支援についてのノウハウを持っており、生活オリエンテーションを含めた様々な支援を代行し、受け入れ企業の負担を軽減できるからです。
特定技能外国人の受け入れをご検討中でしたら、製造業特化の人材派遣会社「キャリアリンクファクトリー」へぜひお問い合わせください。