フィリピン人の雇用が増加する実態と雇用ルールPOEA・POLOについて紹介
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少子高齢化により日本人の労働力人口は減少し、人手不足が年々深刻となる中、多くの企業がフィリピン人を雇用し、人手不足の解消に繋げています。
今や日本の労働力に欠かせない存在となりつつあるフィリピン人ですが、雇用に関する独自の雇用ルールがあり注意が必要です。雇用ルールに違反すると、雇用が継続できなくなるばかりでなく、フィリピンの法律に抵触する可能性もあります。
この記事では、フィリピン人の雇用が増加している実態と受け入れ企業のメリット、雇用に関する注意点や方法を紹介いたします。
日本でフィリピン人の雇用が増加している実態と理由
令和4年10月末現在、外国人労働者数は182.2万人(前年172.7万人)となっており、前年比では9.6万人増加し、届出が義務化された平成19年以降過去最高を更新しております。
外国人労働者が増加する背景には、フィリピン人労働者の増加が挙げられます。外国人労働者の国籍別の内訳を見ると、フィリピン人の割合は、ベトナム人、中国人に次いで3番目に多く、全体の11.3%(20.6万人)を占めております。直近3年の増減率を見ると、ベトナム・中国・フィリピンの上位3国の中で最も高く、全体総数と比較しても増加傾向が顕著です。
令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | 直近3年の増減率 | ||
---|---|---|---|---|---|
人数 | 人数 | 人数 | 割合 | ||
外国人労働者総数 | 1,724,328 | 1,727,221 | 1,822,725 | 100.0% | 105.7% |
ベトナム | 443,998 | 453,344 | 462,384 | 25.4% | 104.1% |
中国 | 419,431 | 397,084 | 385,848 | 21.2% | 92.0% |
フィリピン | 184,750 | 191,083 | 206,050 | 11.3% | 111.5% |
参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)|厚生労働省
フィリピン人の雇用が増加している理由
何故フィリピン人の雇用は増加しているのでしょうか。在留資格別のフィリピン人労働者数で実態を確認していきます。
在留資格別の人数割合では、「身分に基づく在留資格」がフィリピン人労働者全体の70%の割合を占めております。増加率は「専門的・技術的分野の在留資格」を持つ人数が、直近3年で171%と大幅増となっているのです。
「専門的・技術的分野の在留資格」と、「身分に基づく在留資格」を持つフィリピン人が、全体人数の増加に起因していることがわかります。
令和2年 | 令和4年 | 増減 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
人数 | 割合 | 人数 | 割合 | 人数 | 率 | |
全在留資格計 | 184,750 | 100.0% | 206,050 | 100.0% | 21,300 | 111.5% |
専門的・技術的分野の在留資格 | 12,537 | 6.8% | 21,482 | 10.4% | 8,945 | 171.3% |
特定活動 | 5,207 | 2.8% | 5,055 | 2.5% | ▲ 152 | 97.1% |
技能実習 | 34,590 | 18.7% | 32,206 | 15.6% | ▲ 2,384 | 93.1% |
資格外活動 | 3,176 | 1.7% | 3,085 | 1.5% | ▲ 91 | 97.1% |
身分に基づく在留資格 | 129,235 | 70.0% | 144,221 | 70.0% | 14,986 | 111.6% |
不明 | 5 | 0.0% | 1 | 0.0% | ▲ 4 | 20.0% |
身分に基づく在留資格とは
身分に基づく在留資格には「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」の在留資格が含まれます。
就労活動に制限がない在留資格として扱われ、就労の制限がありません。日本人と同様に様々な仕事に就くことができ、単純作業労働の就業も可能です。在留資格の特性上、日本語が堪能で、日本の文化に馴染んだ外国人労働者も多い傾向があります。
専門的・技術的分野の在留資格とは
専門的・技術的分野の在留資格には、「特定技能」や「教授」、「医療」、「教育」などの高度人材が含まれます。
専門的・技術的分野の在留資格の雇用が増加している要因として、外国人労働者受け入れ制度の拡大を目的に、2019年に導入された特定技能の在留資格が考えられます。
特定技能とは、国内人材の確保が困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的に創設された在留資格です。
特定技能の在留資格が新設されたことで、専門的・技術的分野の在留資格を持つ外国人労働者の全体数は、前年対比21.7%と最も増加しているのです。
特定技能の在留資格を持つフィリピン人の雇用が増加している背景には、技能実習生として日本に来たフィリピン人が、特定技能の在留資格に変更しているケースが挙げられます。
日本はフィリピンと比べて給与水準が高く治安も良いので、長く日本に在留していきたいと考え、在留期間を延長できる特定技能の在留資格に変更していると考えられます。
フィリピン人を雇用するメリット
フィリピン人の雇用が増加する背景には、受け入れ側である日本企業がフィリピン人の雇用に対するニーズを高めているからです。そこでここでは、フィリピン人を雇用する企業のメリットを紹介いたします。
減少する日本人の労働力を補う
日本人の労働力は、少子高齢化の影響で年々減少傾向です。総務省統計局公表の労働力人口で公表されたデータによると、2003年から2023年の約20年間で、日本人の労働力人口は173万人減少しております。特に15~34歳は476万人もの著しい減少となっているのに対し、55~64歳は152万人増加しているのです。
一方、全世界の人口は年々増加傾向にあります。フィリピンを含む外国人労働者の受け入れを積極的に進めることで、日本人の労働力減少を補えるメリットがあるのです。
フィリピン人は平均年齢が若く人口も増加傾向
日本人の人口は約1.2億人で平均年齢は約49歳と、世界で2番目に高齢化が進んだ国となっております。
一方、フィリピン人の人口は約1.1億人で人口は右肩上がりに年々増加しております。
平均年齢は約26歳で、日本人と比較するととても若いことがわかります。日本人の労働力人口減少を補うだけでなく、若者の就業が期待できるフィリピン人の雇用にメリットを感じる企業が増加しているのです。
フィリピン人は英語が共用語となっておりコミュニケーションが図りやすい
フィリピン人の共通言語はタガログ語ですが、学校教育や公用会話で英語を学んでおり、多くのフィリピン人が英語を話せます。フィリピン人のうち、9割以上が英語を話せると言われているのです。
外国人を受け入れる際の課題となる言語ですが、各国の通訳やマニュアルを用意するのは困難です。英語が理解できることで、コミュニケーションや業務指示が行いやすいメリットが挙げられます。
また、身分に基づく在留資格を持つフィリピン人が既に職場にいる場合、タガログ語や英語の他に、日本語も理解している可能性があります。同じ職場で受け入れを行う場合には、日本語の通訳や指導役にすることで、より言語の問題を解消できるかもしれません。
フィリピン人を雇用する注意点
雇用するメリットの多いフィリピン人ですが、独自の雇用ルールには注意が必要です。
国民の多くが海外で就業しているフィリピンでは、海外で就業しているフィリピン人の保護や管理監督を行うという独自の雇用ルールがあり、現地(フィリピン)での直接雇用や企業側が選定したエージェントを使っての求人活動は行えません。
フィリピン人を雇用する流れ
フィリピン人の雇用は、以下のような流れで行います。
- フィリピン人の雇用の流れ
- POEA認定のエージェントと契約を結ぶ
- 審査書類を作成し、POLOに提出
- POLOによる審査(約2週間)、面接日程通知が届く
- POLOと受け入れ企業の面接(面接は英語、通訳同行可)
- 許可証書にて面接通過の連絡、契約したエージェントに書類を発送
- 契約したエージェントがPOEAに書類を申請・承認
- 人材募集開始、面接・人選、在留資格申請
- 在留資格取得後、人選したフィリピン人労働者が査証申請・承認
- 契約したエージェントがPOEAに海外就労認定証の発行を申請・承認
- フィリピンの出国、日本への入国が可能となる
POEAとは、フィリピン海外雇用庁のこと
フィリピン人の雇用には、POEA認定のエージェントと契約するところからスタートします。POEAとは、「Philippine Overseas Employment Administration」の略称で、フィリピン海外雇用庁を指します。
フィリピンの送り出し政策の中心機構で、日本を含めた海外で就業するフィリピン人の権利を守る目的で活動している団体です。
フィリピン人の雇用は、POEAが認定した現地エージェントを介して進めることが定められております。POEA認定の現地エージェントは複数ありますので、受け入れ企業側でエージェントを選定し、契約を結ぶ運びとなります。
POLOとは駐日フィリピン海外労働局
フィリピン人の雇用には、POLOの理解も必要です。POLOとは、「Philippine Overseas Labor Office」の略称で、駐日フィリピン海外労働局の役割を担うPOEAの出先機関です。
海外各国に拠点があり、日本では駐日フィリピン大使館と在大阪総領事館の中に活動拠点があります。POEAからの審査は、POLOに出向き受ける必要があります。
すでに日本に在留しているフィリピン人を雇用する場合は?
すでに日本に在留しているフィリピン人を雇用する場合においても、一部の場合を除いて雇用主の企業がPOEAに登録される必要があります。
例外として、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の在留資格を持つフィリピン人は、POEAに登録していなくても雇用できます。
留学生や特定活動などで在留しているフィリピン人が就労する場合や、技能実習生が特定技能に在留資格を変更する場合は、上述の手続きが必要となります。
フィリピン人を雇用する方法
フィリピン人の雇用は様々な方法で行うことが可能ですが、人手不足の解消を目的に雇用を進める場合には、以下2つの方法が有効的です。
身分に基づく在留資格を持つフィリピン人を雇用する
永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の在留資格を持つフィリピン人の雇用は、POEAへの登録は不要です。
日本人と同様に様々な仕事に就くことができ、在留期間の制限もありません。日本に在留する多くは、身分に基づく在留資格を持つフィリピン人ですので、最も雇用しやすいと考えられます。
雇用は国内で行えますが、漢字が読めない、難しい言葉を理解できない人もおり、採用方法には工夫が必要です。自社にフィリピン人の採用に関するノウハウが無い場合には、人材派遣や人材紹介会社の活用が有効的です。
特定技能の在留資格でフィリピン人を雇用する
特定技能の在留資格を持つ人の雇用は、期間・業種の制限や在留資格の申請・更新の手間があるものの、国内人材の確保が困難な状況にある産業分野が受け入れ可能業種となっており、在留期間も長く、雇用しやすい在留資格です。
また、在留資格の対象者も多く、技能実習2号からの変更も可能なので、今後対象者は更に増加すると考えられます。ただし、技能実習から特定技能に在留資格を変更する場合、POEAへの登録が必要となりますので注意が必要です。
まとめ
フィリピン人の雇用は仕組みや注意点を理解することで、日本人の労働力人口不足を補える有効的な手段です。特に、就労制限のない在留資格や、特定技能を持つフィリピン人を雇用することで、人手不足の解消が期待できます。
しかし、フィリピン人の雇用は独自の雇用ルールがあり、また採用活動も日本人と同じ要領ではなかなか上手く進まない場合があります。
自社での活動が難しい場合には、外国人の採用に特化した人材派遣や人材紹介会社に相談・依頼することが有効的です。なぜなら、受け入れニーズに応じての人材提案や、採用・雇用の負担を削減することができるからです。
もし、製造業関係の業種でフィリピン人の雇用を検討していましたら、製造業に特化した人材派遣会社のキャリアリンクファクトリーにご相談ください。企業様のご希望に応じた、フィリピン人スタッフをご案内いたします。